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特集記事アーカイヴ Issue 2001.01-02

独りでやること。自分が充足して、いいサウンドを鳴らせること。
詩人三代目魚武濱田成夫に聞く詩作と朗読。

インタビュー・構成:小森岳史
テキスト:佐藤わこ

■ 90と100っていうのは次元が違う

― 魚武さんの詩って、すごく技術的なんですよね。書いている時にどうですか。 わけのわからないところがぽろっと出てきたりしません? 書いている時に「何でこのひと言が出て来たんだろう」ということはないですか?

魚武 それはもういっぱいある。それを待っているところもあるんですよね。詩 が100で完成やとしたら90まではすぐ出来るんですよ。もっと突き詰めれば100に行く んじゃなくて、90から100は次元が違う。

― 90まで行くというのは「技術」ですか?

魚武 技術とか感覚とか全部含めても90までは行けるんですよ。90と100っていうの は次元が違うわけですね。その次元の違うところが出来ないと完成じゃない。それが やっぱり一番苦労するところ。90までで止めてる方が人から見たら詩っぽくて、なん でこれで完成じゃないのと思われるかもしれないけど、その10が俺は一番大事。

― 魚武さんの作品は、エンターテイメントな「作品」として高い技術できれいに仕上がっていると思います。でも、それは時に読者がその中に逃げ込んで外に出なくてもいい、つまり完成されてるからこそ作品の中に入り込んで行けると思うんです。その状態は多分、魚武さん自身が一番嫌いな「ファンタジーの中に逃げ込んでいる」 状態だと思うんですよね。形は違うけれども持っている機能としては、自分の詩も似 たようなことになってるんじゃないかと思う時はありますか?

魚武 詩自体が持つ機能でいうと、そういう風にとる人がいるのかもしれないけれども。逆に「そうじゃない人もいる」というのが俺の(作品)なんじゃないかなと思う。 そういう(逃げ込むような)人がいるのはいるんでしょうけど。下世話な話ですけど 俺の詩って実践で使えるんです。例えばキャバクラで女口説けたり出来るんですよね。 若い子とかが「口説けた」と言ってくる。「いけました魚武さん、この詩で」と。詩を覚えて朗読してるわけですよ。持って読んだらやばいから。(笑)それでうまいこといけて、何度目かの時に(彼女が)家に来て「あなたコレを言ってたのね」って。

― 魚武さんの詩集が見つかって。(笑)

魚武 言われたことがあるとかね。(笑)そういうのが嬉しい。それは本当の意味の実践ですよね。寸止めじゃなくて。「コレ言うてたのね!」と言われてそいつが「し まった!」と思った時、「じゃ今度は俺がそんなんを!」って思うかもしれないでしょ 。そっからやないですか。やっぱり俺はそういうところから始めたい。実際、事実としてそいつが女を口説けたっていうのは、俺の詩に対するリアクションの中でかなり俺好みなんです。

― なるほどね。

魚武 詩集で感動されたりとかすんのは、そんなに望んでないんですね。俺のかっこ 良さに感動するのはいいんですよ。(笑) でも俺はやっぱり「笑わしたい」んですよね。実践で戦っていないと笑えないものも あります。例えば人が俺の詩を読んでて「ふっ」と笑うとすると「えっ? どれで笑っ たん?」ってなるわけです。「あー、コレで笑ったんや」と。そういう意味で笑かす のが一番俺は嬉しいですね。一冊目の詩集の中に誤解されるものがあるわけですよ。 「感動した」とか人に言われると、「うわ、この詩はもう排除」っていうのがある。 (笑)「いい誤解」とか嫌なんですよね。尊敬とかもされたくない。なんでかという と俺はすごい不自由なのが嫌なんです。背負うのが嫌。ずっと独りでやってきてるで しょ。その自由の方が大事。

― 受け手(読者)を突き放してますよね。

魚武 俺は読者や客とキャッチボールする気はゼロなんですよ。ほんまのピッチャー が客席に向かって本気の球投げると怪我するでしょ。俺がピッチャーとキャッチャー で、表現したいものの対象がバッター。そのバッターを討ち取るというのが表現出来 たということです。

― それが他の「詩」と魚武さんの「詩」との大きな違いですね。観客に本気の 球投げるというような詩人もいるじゃないですか。

魚武 俺がメッセージというか、「こういう生き方をしろ」とかいうことを本当に強く言いたいかというとそれは無い。そらで詠める詩が出来て、その詩を誰が創ったのか最終的に分からなくなってもいいと思ってるんです。もしどうしても伝えたいなら、あくびのように伝わるのがベストですね。それは自分自身の生き様そのものを見せることだと思う。自分の背景も技術に含まれているから。客に投げつけるんではなくて、 大事なことは自分の基準で生きること。どれだけオリジナルな美意識を持つことが出 来るか。一番強いのは独りでやること。自分が充足して、いいサウンドを鳴らせることなんです。

 

■ 詩の朗読ってのはパンクが始まった時といっしょで

― 短歌や俳句とかをやろうと思いますか?

魚武 ちょっと憧れるよね。(笑)(俺の作品の中に)短歌風とかたまにある。(笑) 昔、井原西鶴とか神社で朝まで俳句詠み倒したりしてるわけです。そういうオッサン もいた。俳句とか短歌から学んだ方が良いことは沢山あると思う。今の現代詩とかは 朗読にはすごく適してなかったり下手やったりとかする。でも短歌とか俳句って詠む ためのものやから、ホントは日本人っていうのはすごく詠むというものが血の中にあ るはずなんです。それが今の朗読を聞いてると活かせてない。昔から日本人は詠んで る。句会とかやったり、かなりイカシたイベントしてるわけ。(笑)そういう歴史が あるのに、まるでなかったかのように詠むのが下手なんです。俳句とか短歌をやれっ て言われたらそこまで考えてない。季語とかあるから嫌なんです。俺の季語でいいな らええけど。

― 「感情を込めて詠む」ことについて、以前話してらっしゃったと思うんですが。

魚武 ただ感情込めて詠むっていうのは安易。感情込めることに頼っているわけです。 「お願い五千円貸して〜」って言うてるみたいで嫌なんです。(笑)違う五千円貸し ての言い方してみろやって思う。まぁ、色んな詠み方あるからおもろいんでしょうけ ど。ラップ風の詠み方とか、みんな似てる。でも可愛い。やってみようと思ってやっ てるってのはええやん。そういう意味で言うとある種パンクやと思うんです。詩の朗 読ってのはパンクが始まった時といっしょで、バンドやったら誰か仲間を見つけない と駄目だけど、詩なら自分で書いてすぐそのまま人前で詠める。その良さってのはあ りますよね。今日、始めた奴がその日に朗読デビュー出来るわけだし。何処ででも出 来るし電気がいらない。ギター買いに行かなくてもいいし、コード覚えなくてもいい。 旋律は自由に詠めばいいわけだし誰でも始められる。

― この頃、リーディングをやり始めた若い人を見てるじゃないですか。どう 思われますか?

魚武 空回りは感じる。詩の出来不出来もあるかもしれないし、出来が良かったとし てもそこから人前で詠む時に、外に向かってるというよりも内にこもってるっていう。 まだ場数もあるんでしょうけど。苦労して創って言いたいことあったり、表現したい イメージがあったりとかするとしたら、そのイメージを「本当に伝えたいと思ってる のかな」と朗読を聞くと思う。書いた奴が他人にではなく、書くことによってまず自 分自身に表現するとする。自分自身に対してもそんなに伝えることが無いんかなと。 バンドでも、うまいだけなら無理で出音って大事なわけです。スピーカーより向こう で鳴っている感じで出音が悪いっていう、そういうのもある。

― ひとつは技術だと思うんですけど。技術が自覚的ではないっていうのが。

魚武 勿論。でも、それでええのかなとも思う。やってみたいと思って人前に出て詠 んだわけで、そこから始めればええと思う。審査とか頼まれるけど苦手なんです。何 が良いのかなんてそれぞれやから。でもどうなりたいか、その相手によりますよ。「もっとこうなると思ったのに、ならないんだけどどう思います?」とか聞かれたら 答えようがある。それは朗読に関してか詩に関してか、その両方なのかによってまた 違う。詩が良くないから朗読がひどく聞こえる場合もあればその逆もある。まだ言葉に力があれば、朗読が下手でもアホみたいな棒読みでもすごいかもしれないし。
でも俺は朗読は楽なんです。なにも持って行かなくてもいいし、すぐ始められるから。それで疲れないんです。書くのはすごい大変やもん。朗読用の詩とかも考えたことあり ますよ。それは朗読の中から思いついてくるんですけど、わざとおいしいとこを入れ ていく。一番ひどい朗読は、長い詩を詠む時に全部詠むのしんどいから、途中まで詠 んだら「ワープ!」って言うて最後の二行を詠んでしまうんです。その時見てる人の 緊張がほぐれる。ひとつの詩に犠牲になってもらう代わりに、詩はなんぼでもあるん やから、残りの詩を聞かせることも出来るんです。

― 朗読の予定を教えていただけますか?

魚武 今度セックス・ピストルズの映画上映の前に詩の朗読を頼まれたんです。そう いう場所で詩の朗読を頼まれるのは俺くらいのもんですよ(大笑)。朗読ってフット ワーク軽いよな。

(2000年10月31日 西荻窪ハートランドにて)

三代目魚武濱田成夫
1963年、兵庫県西宮市生まれ。詩人。 近作として詩集「俺様は約束してない事を守ったりする。」(角川文庫) 「三代目魚武濱田成夫詩集ベスト1982-1999」(メディアファクトリー) エッセイ「人生よあなたはまるでこの俺様の子分。」(講談社) 絵本「こころのなかのビルのお話」「いのちのえんそうのお話」 「うみとおれのお話」(以上、メディアファクトリー)他、著作多数


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